チャオございます!
靴底が相次いで割れたり穴があいたりで修理代に首が回らない、貧乏メンズファッションライターのサカモトでございます。
さて皆様、いきなりですがちゃんとアイロンがけしてございますか?
特にスーツを着る機会の多い就活生や新社会人の皆様。いくらタイを締めようとも、襟や袖口から覗くシャツがシワクチャでは格好はつかぬものでございます。
そんな皆様のために今回もワタクシが立ち上がったのでございます!
いつになくフザケたタイトルですが内容はいつも通り真面目な内容でございますのでご安心を。
(↑一体いつ真面目な記事を書いたというのだ)
通り解説前のサカモトの蘊蓄タイムです。お付き合いください。
アイロンに慣れていない人ほどやりがちなのでございますが、とりあえずシャツを平らにアイロン台の上にのせてシワを伸ばそうとするのが、一番やってはなりません。
というのはシャツというのは高級であればあるほど、もちろんそうでないものでも、ある程度人体に沿って立体的に作られてございます。
ですからただアイロン台に乗せれば良いというものではないのでございます。
シワを伸ばす、というのももちろんアイロンの目的の一つなのでございますが、それよりも”立体的に仕上げる”ということを意識した方が結果としてシワも綺麗に伸びやすいのでございます。
ただシワを伸ばすのと、シャツの構造を理解してそれを活かすようにアイロンをかけるのとでは全く意味が違うのでございます。
そこのところも含めて早速(早速ではない)解説してまいりましょう。
この写真はアイロン前でございます。これがどう仕上がるかよくご覧くださいませ。
※アイロンをかける順番は人によって色々あるでしょうがあくまで”サカモト流”ですので今回は悪しからず。
まずはシャツの襟にアイロンをかけます。
この時なのですが、アイロン台に置いて一気にかけてしまう人が多いかと思います……が、上の写真をご覧ください。
先ほども説明いたしましたが、シャツというのは立体的に作られてございます。襟羽根の先が平面に置かれているのに対し、襟羽根の付け根にシワが寄っているのがお分りいただけるでしょうか?
これは首に沿ってカーブしている台襟部分に接結されている襟羽根の付け根を縮ませながら縫っているため、このようなシワがどうしても寄るのでございます。
(このように、違う大きさのパーツ同士を縮めたりしながら、違和感なく節結することを”いせ込む”と言います。「うーん、このシャツいせ込みが足りないなぁ」などと店で言っておりますと嫌味な客になれますので是非!)
ですのでまずは襟羽根の上半分にアイロンをかけていきます。その際、襟羽根の表側を上に向けて左右の襟先から襟の中央に向かってアイロンをかけていきましょう。
次に、下の写真のように先ほどアイロンをかけた部分をアイロン台から落として、襟羽根の付け根部分のシワを伸ばします。
この時も先ほどと同じように左右から中央に向かってアイロンをかけていきます。
これができましたら、同じ流れで襟羽根をすべてアイロン台から落として、台襟にもアイロンをかけます。これも左右から中央に向けてかけていきましょう。
これで襟の行程はおしまいでございます。
襟だけアイロンをかけ終えた写真がコチラ↓
アイロン前の写真に比べて襟が立体的にふんわりと仕上がっているのがお分かりいただけるかと。
さて次は袖口でございます。
「あれ? 袖は?」と思われた方。先ほど横着はするなと言ったな、あれは嘘だ(このネタわかる人いるかな……)
いや勿論嘘ではないのですが、スーツをお召しになる方でございましたらどうせ上着は脱ぎませんからこの行程は省いても構いません。(シャツはそもそも下着ですのでジャケットは脱がないのが正当でございますゆえ)
ことワタクシも基本上に着たジャケットは脱ぎませんし、シャツ一枚で着るときは大抵袖を捲って着ますので、袖にはアイロンは当てません。それに袖というのは着用しておりますと真っ先にシワになるところでございます。微動だにせず突っ立っていたいのであればお止めは致しませんが、普通に生活して入ればそうはいきません。
それでもどうしてもアイロンをかけたい方は、袖口のボタン部分を上向きにして袖をアイロン台においてくださいませ。(このとき身頃をアイロン台から落とすと平置きにしやすいです。)
その状態で袖口を軽く引っ張りながら袖を撫でるように優しくスチームを当ててくださいませ。強く押し付けてしまいますと裏側にシワが入りやすくなってしまいますゆえ。
さて、では本題の袖口の解説に参りましょう。
まずは袖口のボタンを外した状態で写真のようにアイロン台に袖をおいてくださいませ。
これは、シャツの袖口(カフ)というのは手首に沿って自然なカーブを描く為に、外側より内側の生地の方が微妙に短いことがございますゆえ、無理に平面においてしまうと余計なシワが入ってしまうのでございます。
ですので、写真のように袖口を丸めた状態で置き、袖口に対して直角に動かしつつ、少しずつ左右に動かして行きましょう。
このときアイロンを動かすのとは逆方向の袖口の端を軽く引っ張りながらするのがコツでございます。
お次は背身頃にかけてまいります。
……とその前に、先ほど横着するなと言っ(以下略)
この行程も先ほどと同じ理由で、省いてしまってもかまいません。
それでもかけたい、もしくはシャツ1枚で着るという方にはこれから解説いたします。
写真のように袖を裏返し、袖穴をアイロン台の先部分に入れ、アイロン台の上に被せます。
この時、アイロンは先の尖った部分をやや浮かせて滑らせるようにアイロンをかけましょう。
この先の部分というのは細かいパーツやヒダをかき分ける為についてございますので、広い平らな面をかける際に先の方でかけておりますと、余計なシワが寄ってしまうのでございます。
また、アイロン台に引っ掛けた部分を支点にしまして、軽く引っ張りながらアイロンをかけていくのがコツでございます。
この部分をかけ終えましたら次は身頃を奥にずらしまして下の写真のように被せましょう。
この部分にも先ほどと同じようにアイロンを滑らせていきます。
反対側の背身頃も同じ要領でアイロン台の先を袖穴に入れ、写真のように被せ、同じようにシワを伸ばしていきます。
さて、最後は前身頃です。
ここはジャケットをお召しになってもある程度見える場所でございますから、キチンとアイロンを当てましょう。
写真のようにアイロン台に引っ掛け、背身頃と同じようにシワを伸ばしていきます。
この時ボタンのついている方の身頃(メンズなら右、レディースなら左)の前立ては基本的に後ろ側にきますので、着ているときは見えませんゆえ、かけなくても構いません。
ただワタクシなどは前を二つ開けてノータイで着ることが多いので、ボタンを避けるように前立てに対して直角にアイロンを当てます。
次に、先ほどアイロン台に乗り切らなかった部分を、身頃をずらしてアイロン台にのせます。
それが終わりましたら反対側の身頃を同じようにアイロン台に引っ掛けましょう。
先ほどと違い、前立てが着た時に見えますのでコチラはしっかりアイロンをかけましょう。
これも終わりましたら、先ほどと同じように身頃をずらしてアイロンをかけましょう。
さて以上でアイロンはお終いでございますが、この後畳んで収納するという方も居られますでしょうから、簡単な畳み方もお教えいたしましょう。
まずはフロントボタンを全て閉じていただいて、背中側を上にして置いてくださいませ。
そうしましたら、下の写真のようにA4サイズのクリアファイルを背中においてくださいませ。
あとはそれに沿って身頃と袖をしまい、クリアファイルの底辺に合わせて身頃を折り返し、クリアファイルを抜いてもう半分に折りましたら……
完成でございます!
このあと衣装ケースなどに仕舞われるときに下の写真のように互い違いに収納しますと、襟の立体感も崩れにくく、かつカサも減るのでございます。
出張などでスーツケースにシャツを入れる際も同様に入れるのをお勧めいたします。
ただここまで解説してなんなのですが、ワタクシ個人といたしましては、畳んでしまうとせっかくの立体感が若干潰れてしまったり、畳ジワが入ってしまいますので、ハンガーにかけておくことをお勧めいたします。
いかがでしたでしょうか?
アイロンというのは面倒くさい様で、やっぱり面倒臭い作業なのです。
しかしこういった面倒くさい作業だからこそ、キッチリしてあるかどうかにその人の人柄が出る部分でもございます。
シャツのシワと同時に心のたるみも、変なところにシワ寄せが行かぬ前に伸ばしておきましょう。(特大ブーメラン)
優しい大学生の皆様などは、時間があれば是非お父様のシャツにも同じ様にアイロンをかけてあげましょう。
孝行したいときに親はなし、では遅すぎますゆえ。
”今日という日は残りの人生の最初の1日”
── 映画「アメリカンビューティ」より
編集部から一言 |
心のシワも伸ばしたい |
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