裾のシングル、ダブル
スーツの組下(トラウザーズ)やスラックスの裾の直し方にもシングルとダブルがございます。よく勘違いされる方がいますが、これはジャケットのシングルとダブルとは全く関係ありません。
こちらには明確なフォーマル度の差があります。
何となくお分かりかもしれませんがダブルの方が折り返されている分カジュアルです。ですのでセミフォーマル以上などでお使いになるスーツでは裾はシングルで直したほうが(拗らせたマナーマニアやスーツマニアに突っかかられなくて)無難でしょう。
ちなみにこれらは和製英語で、英語だとシングルはプレーン、ダブルはターンナップとなります。
ダブルの発祥には諸説ありますが、某おしゃれな王族が雨の日に、裾が濡れぬよう折り返したのを新しいファッションだと勘違いしたみんなが真似した。というのが通説となってございます。
ちなみに礼服は後ろを少し長く、斜めに裾を仕上げるのですが、これをモーニングカットと呼びます。
シングルジャケットの一番下のボタンを外す理由
これはスーツマニアの間でも議論が絶えない問題なので、明確なリソースがありません。
ですので明確なリソースや根拠を指摘できるわけではありませんが、少なくとも現代においてほとんどのシングルスーツは一番下のボタンを留めるようにはできておりません。
外す前提で仕立てられています。
留めてしまうといらぬシワがよったり、型崩れしたり、これをやっているだけで着方をまるでわかっていないと一蹴されることもあります。
ボタンは全部留めるという真面目な紳士っぷりには頭がさがる思いですが、その真面目さをスーツと世間は受け入れてはくれません。明確な意図がない限りすぐに外しましょう。
3つボタンシングルジャケットのボタンの止め方
3つボタンのジャケットをお持ちの方はどこを止めればいいのかと迷ったことはございませんか?
一番下はもちろん外しますが、上二つ、どう止めればいいのか
一言に三つボタンと言っても二種類あります。
一番上のボタンホールをご覧になってください。
下の二つと同じように縫われていますか?
それとも裏表逆に縫われていますか?
前者であれば真ん中だけでも上二つでもお好きなように留めていただいて構いません。
どちらか自分に似合う美しい留め方をなさってください。
ただ後者は”三つボタン段返り”といい、上のボタンは留めるようにはできておりません。
留めると型崩れの恐れもありますので開けるようにいたしましょう。
背広の語源
若い方はスーツのこと背広なんてお呼びになることはないでしょうけれど、聞いたことくらいはあるのではないでしょうか?
スーツとテーラードジャケットを複合したような言い方(スーツとジャケットの区別ができていないのは昔からの模様)ですが、そもそもどうしてこう呼ばれるようになったのか。
実はハッキリしたことはいまだに分かっていないのですが、いくつか説がありますので(どれも決定打に欠けるものばかりですが)、一通りご紹介しましょう。
- 「sack coat」(スーツの派生系の一つサックスーツの事)の訳語で「ゆったりした上衣」の意。
- 軍服に対して市民服を意味する「civil clothes」から変化したとする説。
- 英国ロンドンのスーツの聖地「サヴィル・ロウ」から変化したとする説。(写真はサヴィルロウのノートン&サンズ)
- 紳士服に用いられる羊毛・服地を意味する「シェビオット(Cheviot)」から変化したとする説。
結び
いかがでしたでしょうか、知ってるようで意外と知らないでしょう?
今まで気になっていたこと、モヤモヤしていたこと、スッキリしたでしょうか(まぁハッキリしない事も一部ありましたが)
秋になってスーツに袖を通す時、どこかでこれらの蘊蓄を披露なさって感心されるなりウザがられるなりしていただければ此れ幸いです。
では皆さまarrivederci!
”知識は実践されないと価値がない”
アントン・チェーホフ