おはこんばんにちは、文章がくどい事でおなじみ(というキャラを確立しようとしている)きっとみつかるカフェ、メンズファッションライターのサカモトでございます。
この度は大学デビューでファッションを一新したいけれど何を着ればいいのかわからない、どう着ればいいのかわからないという諸兄のためにサカモト流ファッションの思考論を(ひどくウザい御託とネタと名言を交えながら)お教えいたしましょう。
まずはここのところを分かっていただけなければなりますまい。
よくファッションというモノの良し悪しは”ファッションセンス”なるさながらUFOなみに実態のない、謎の尺度で語られがちでございます。
しかしそんなものはワタクシに言わせればマヤカシ以外の何物でもございません。いえ、人が実際にその尺度で測られて、踊らされる現状を考えると仮想通貨と形容したほうが正しいのかもしれません。マヤカシなのに謎の実態感がある、という意味で。
さて、ブラックジョークはこの辺りにして本題に入りましょう。
ファッションはセンスでなければ何なのか?
それは理屈です。
ワタクシの尊敬するメンズファッション評論家でジャーナリストの故・落合正勝氏は自身の著書の中でこうおっしゃっています。
ファッションとは学習であり、スポーツを練習することや勉強をすることと同じである
算数しか習っていない小学生がいきなり数Ⅲの範囲をできるでしょうか?(ちなみに当方、美術系の高校に行っておりました故、数Ⅲは教わっておりません)
バットを握ったことのない人がいきなりホームランなど打てるでしょうか?(ちなみに当方、野球のルールもよくわかっておりません)
ワタクシのおふざけはさておき、ファッションも結局のところ同じなのでございます。
ファッションについての知識、経験のない人間がいきなりかっこいいファッションをしようと思ってもそれは、Fラン文系大学生のワタクシがいきなりNASAに入社したいというようなものなのでございます。
手っ取り早く大学デビューしたい新入生諸兄にとってそれは酷な話でございましょう。
しかし案ずるなかれ、受験にも攻略法があるようにファッションにも攻略法はあるのでございます。
1から学習せずとも生まれてこのかた遊び相手といったら専ら洋服だったワタクシがわかりやすくまとめたサカモト流ファッション思考論を伝授いたしましょう。これを知っていると知っていないとではその学習速度は天地の差でしょう。
“たくさん失敗してバカにされながら勉強しないと。ファッションってそういうもんですよ。”
by落合正勝
よく何を着ていいかわからない。という方に、ほとんどの場合共通するのがファッションに”軸”がないということでございます。
では何がファッションの軸となりうるか、それはスーツです。(俺はドクロの服しか着ねぇ!というようなファンキーな御仁などはこの限りではありませんが。ワタクシ小学生の頃そんな感じでございました)
スーツを仕事のためのユニフォームか何か、または特別な場のための衣装か何かと思っておられる諸兄におかれましては、目ん玉見開いてしっかり焼き付けやがれでございます。
※スーツの選び方については私のハジメテの記事にその選び方を書いてありますので是非合わせてそちらもお読みください。
さて、なぜ基準がスーツなのか。
例えば、です。完璧なスーツ姿を思い浮かべてください。紺かグレーの無地のウールのスーツに紺かグレーの無地のネクタイ、白いドレスシャツに黒の内羽根のストレートチップ靴。(撮影環境の関係で靴は写せませんでした。申し訳ございません。)
そこからまずネクタイを外してみましょう。すこしカジュアルになりましたね?
次に靴を茶色のローファーにしてみましょう。黒の紐靴よりもずっとカジュアルでしょう?
次にパンツを白のコットンパンツにしてみましょう。
一気に爽やかでカジュアルになりましたね
ではもっとカジュアルにしていきましょう。ジャケットをウールスーツのそれから、コットン素材のジャケット、色はそうですね、ベージュなど素敵でしょう。
どうです?
これで端正なスーツ姿がワタクシ好みのイタリア〜ンな装いになりました。
そこから靴を白スニーカーなどに変えれば新入生諸兄でも気負わず装える雰囲気になるでしょう。
つまりワタクシのファッション思考論の基本はそういうことなのです。
そこそこ綺麗めな装い(スーツほどではない)をしなければいけない時、いきなり0からそこに向かって綺麗めなアイテムを足していくのではなく、完璧なスーツ姿、つまり100からドレス的要素を引いていくのでございます。
上で示しましたようにタイを絞めているよりはノータイ(イタリア語でセンツァクラヴァッタと言います。イキりたい諸兄は是非!)の方がカジュアル。
スーツよりは上下別のジャケットとパンツ(いわゆる”ジャケパン”というやつですね。)の方がカジュアル。その素材もウールよりは、コットン(綿)の方がカジュアルですね。
今回は使用していませんが無地よりは柄物の方がカジュアルです。靴にしても紐靴よりもローファー、色も黒より茶の方がカジュアルになります。もちろんスニーカーならもっとカジュアルでございます。
別によりカジュアルな装いをするのであれば、そこで羽織るものがジャケットでなくなってしまっても構わないのでございます。ブルゾンやパーカでも構いません。インナーはドレスシャツではなくカジュアルシャツ、はたまたTシャツだっていいのでございます。パンツだってジーンズでも短パンでも構わないのでございます。
ワタクシが伝えたいのは”何を着るか”ではございません。
”その装いに到るまでの思考法”でございます。
0から足すのではなく100から引いていくのでございます。
これを基準がない状態で0から組み立てるとどうなるでしょう。
綺麗めな格好をしなければいけない、綺麗めな服ってなんだろ……とりあえず白いシャツ着とくか。でも何合わせよ、うーん……
と、こうなるわけでございます(あぁなんと懐かしいことか悠久の過去ワタクシにもそんな時期がございました。)
多くの方がここを理解しておられないのでございますが、カジュアルとドレスとは全く異なるベクトルの存在ではございません。
同じ直線上に在る存在なのでございます。
ちょうど上の図のような関係なのですね。
この図だと先ほどのイタリア〜ンな装いは70くらいでしょうか。
”ファッションとは、上級者になる程引き算である”
byココシャネル
これはそんな難しい話ではございません。誰しも着慣れないものを着るときにはそこに恥じらいがあるものでございます。ワタクシとてそうでございました。
初めて母親ではなく自分で服を買ったとき、Tシャツではなくシャツを着たとき、パーカではなくジャケットを着たとき、ダウンではなくコートを着たとき、スニーカーではなく革靴に足を入れたとき、キャップではなくハットを被ったとき、そこには少なからず恥じらいがあったでしょう。(なお全部ワタクシ)
しかし恥じらいに頬を赤らめるのは洒落た諸兄に手を握られるレディの仕事でございます故、諸兄の恥じらいなどはクローゼットの奥深くにでもしまっておきましょう。
”帽子の新型をコナすには心臓が要るが、然し諸君、自信を以って堂々と被り給へ!”
男子専科1950年10月号より
まさか受験勉強をやりおおせた真面目な諸兄が「毎日なんてめんどくせぇからデートの時だけお洒落しよー」などと不真面目なことを考えるなど、天地がひっくり返ろうともないでしょうが、一応万が一、いえ億が一のために記しておきましょう。
例えば大切なデートのために買っておいた綺麗な一張羅のジャケットをデートに着ていくとしましょう。
その日までに色々とどう着るか、妄想に妄想を重ね、さながら頭の中の諸兄はイタリアの伊達男のようでございます。
しかしどうでしょう。当日いざ着たそのジャケットはまだ全く体に馴染んでおらず真新しくてパリッとしている。諸兄は初めてジャケットに袖を通してソワソワ落ち着かない。
これではせっかくのレディもエスコート出来ぬではございませんか。
こうならないために毎日お洒落して”慣れておく”ことが重要なのですね。
※ただし一回着た服、履いた靴は2日は休ませてあげましょう。
”服装は生き方である”
byイヴ・サンローラン
これはファッション云々以前に身だしなみのお話になってしまうでしょうが、楷書を書けぬものに行書や草書などはかけぬもの。装いもまた然りでございます。
もちろん真面目な諸兄は(以下略)
記念日などに少し高級なレストランに行くのであればジャケットくらいは着てゆきたいもの、ビーチに行ってアクティブに遊ぶのであれば水着が必要、ドレスコードを指定されればその通りに装うこと、山を登るのであれば登山装備が必要、どんなときでもそこに適した装いをしたいものでございます。
そしてなにより主役のレディを立てることでございます。
”品格と教養は必要。でも、精神はガキのままのほうがいい”
by山本耀司
突然ですが、”トリクルダウンセオリー”という現象を諸兄はご存知でしょうか?
基本的に経済学の用語でシャンパンタワーなどに例えられ、富裕層がより富めば、その富は経済を動かし下へ下へと流れ落ちてゆきやがては国益となる。
転じてファッション用語では、まず高級なブランドが流行の最先端を提案し、それがやがて低価格衣料品にも広がる、ことを指す言葉でございますが、このファッションにおけるトリクルダウンセオリーは現代の超情報化社会ではその様相を少し変えているように思われるのでございます。
ハイブランドが発表したコレクションはインターネット等メディアで瞬く間に世界へ広がり、下手をするとほんの数日後には某ファストファッションブランドでは商品企画が出来上がっている状態。
たいして情報力のないブランドでは世に浸透してからそのもはや最新でもなんでもない洋服を売り出すのでございます。
つまりトリクルダウンセオリーにおける上下のベクトルが資本力というよりも情報力に変わりつつあるということです。
お洒落な諸兄におかれましてはさぞかし大量の物欲に駆られていることでございましょうが、洒落るのにまず必要なのは新しい服ではございません。
新しい情報、つまり知識でございます。
それは流行を追うためではございません。流行に流されず、確固たるスタイルを保つために必要なのでございます。なにが自分に必要で、何が不要かを見極めるために必要なのでございます。
“ファッションは廃れる、しかしスタイルは永遠に”
byラルフローレン
こんな当たり前のこと真面目な(以下略)
冗談はさておき、もちろん当たり前のことなのでございますが、だからこそ重要なことでもございます。
極端な話、真夏にコートを着る方は居られませんし、真冬にタンクトップ……は稀に居られたりする様でございますが、これはお洒落ではございませんね。
それぞれの季節に適した素材の、また種類の服をお召しになりましょう。
例えば同じベージュのジャケットであっても、
春夏であればこのように綿や麻の生地のジャケットを同じく綿や麻のシャツで。(綿のシャツでしたら大抵通年着られるものがほとんどでございます。)
秋冬であるならこのように、厚みのあるウールやカシミヤのジャケットをタートルネックのニットの上に。
※ただウールは春のもの夏のもの秋のもの冬のもの等色々ございますゆえ、わからないうちは販売員さんに素直に聞くのがオススメでございます。
わからないことを素直にわからないと言えることもまた、洒落者への一歩ですゆえ。
”あい服は晩夏に鳴くヒグラシのような刹那感があってこそ、ハッとさせられる”
by赤嶺幸夫
さぁここまでワタクシのくだらない御託について来れ、実践できる諸兄はさぞかし洒落ていることでしょうが、最後にこれは、絶対に、絶対に(大事なことでございますゆえ二回申し上げました。)必要なことでございます。
さぁ日々を洒落てスタイリッシュに過ごす諸兄はファッションの知識や教養もふえ自信に満ち溢れ、女性からも引く手数多! デートにこぎつけたレディが諸兄に告げます。
「〇〇君ってお洒落だよねー」
ここで諸兄は言ってしまうのでございます(ここからファッション知識のない方にはまるで呪文のような言葉が羅列します。詳しくなってから戻ってまいりますと大変クスッとくる内容ですので是非そうなっていただけることを祈っております。)
「そうかな? ありがと。やっぱり洋服ってさ、品質なんだよねぇ。いいものは全然違うっていうかさ? このジャケットなんてほら! みてよこの美しい肩から胸にかけてのなだらかなライン! 優雅に返るラペル! しなやかなウェスト! 袖口も見てよほら! 本切羽だよ本切羽! やっぱりこういう細かいところにクラフトマンシップを感じちゃうんだよね! シャツも見てよこれ、美しいカラーのロール! 手仕事のなせる技だよね! このシャツ、ナポリのなんだぜ! え? 知らないの? まったくこれだから知識のない奴はダメなんだよね。あ! おい! 靴踏むなよ! 英国製のベンチメイドなんだから」
何を言ってるかわからない諸兄も、感じが悪いことは十分伝わったかと。
これでは恋も冷めてしまいますね。
たとえ諸兄がどんなにいい服を着ていようとそれをひけらかすようなマネはしてはならないのでございます。まして靴を踏まれて怒りを見せるなど、在り得ないことでございます。
まず心配すべきはそれで踏んだ方が転ばないかどうかなのです。
「大丈夫?」と声をかけることはあれど、怒るなど男の風上にもおけぬものです。怒ってしまいそうになってもそこはグッとこらえるのでございます。
ワタクシもピカピカに磨き上げた靴をベビーカーに踏まれこみ上げそうになる怒りを無邪気に微笑む赤ちゃんの顔をみてグッと押さえ込んだのは記憶に新しいことでございます。(わざとガシガシ踏むような奴には怒ってどうぞ)
たとえ諸兄がトータルコーディネートうん十万という装いをしていようと、諸兄はまるでTシャツにジーンズ姿のような気持ちで過ごせなければならないのでございます。
お洒落な男とはすなわちエレガントな男なのでございます。(ワタクシがそうかどうかはワタクシにはあずかり知らぬことでございますが、気をつけてはいます……)
”装いは知恵であり、美は武器、謙虚さはエレガンス”
byココ・シャネル
サカモト流ファッション思考論、いかがだったでしょうか?
「ウザい」「くどい」「キモい」「ナルシスト」「スケコマシ」「イキり」
書きながら薄々気づいていることが、まだなんとか被弾していない某国からのミサイルのようにバシバシとワタクシの心に降り注いでいるようでございます。
もちろん私自身批判も覚悟の上ですし、伝えたいことは全て本当のことです。
これを読んで少しでもあなたがお洒落になれるのならば(ついでにお給料ももらえますし)私は幸せです。恥じることも悔いることもありません。
ではまた次の記事でお会いしましょう。
編集部から一言 |
真のお洒落は精神から |
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